「雨のハロウィン」

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友達と映画見てお茶しての帰りや。 え?この格好? 普段からオシャレ好きなだけやん。 いつも季節に合わせて服着てるんよ。 兄ちゃん、手出し ええもんやろ。 ほい。 トリックオアトリート。 ハッピーハロウィン。

一際目立つオールレッドの装いが、三宮センター街ど真ん中を歩く。 その姿は明らか人の目を引き、通行人は彼女が通り過ぎてから指差しては、こちょこちょ話している。 が、あろうことか直接声をかけるものは一人もおらず、彼女は長いセンター街を歩き終えた。

(単純に、ばぁちゃんの写真が撮りたい)

僕は話しかけることにした。

ーそのハロウィンの格好素敵ですね

 え、あ、ありがとう

ひょいと帽子をあげ 振り向いた顔は、その言葉をずっと欲していたかのようにも見え、少し照れていた。 短い立ち話をした後に、 ばぁちゃんはふと思い出したかのようにカバンを開け、 僕に小包された一粒のチョコをくれた。 「トリックオアトリート」 その瞬間、左手に持った カバンいっぱいに詰め込まれたチョコレートやお菓子が 僕の目に映った。

想像した。

ばぁちゃんは今日、家で鏡を見ながら服を選び、 「よし!これで行こう!」と門を出たあの時から、 きっと左手に抱えたカバンの中には、話しかけてくれた人や、「トリックオアトリート」と近づいてくる子供達用の お菓子が入っていて、そうやって寄ってきてくれる人との関わりを楽しみたいと意気込んでいた。

なのに... 。

バイバイしたばぁちゃん、あの後はどう過ごしたのだろう。 真っ直ぐ家に帰った? ハロウィンパーティーにでも行ったか? お菓子は配れた? 何より、誰かは声をくれたか? 分からん、分からんが、ばぁちゃん ありがとう。 ハッピーハロウィン。 また来年な。

 
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