僕は下向かへんよ。暗い顔しててもしゃーないやん。
あれは震災の時の話や。僕の家は全壊してもうてね、こんなひどい災害忘れたあかん思て写真を撮り始めたの。でもそこに僕が写った1枚の写真があってな。その顔がこんな暗い表情あるか思うくらいゲゾッとしてたの。その時に思ったんよ。これからの人生、どんなことあっても暗い顔しやんとこって。暗い顔は周りの人も暗ぁするやろ。でな、小学校に皆避難してる時に1人のおばぁさんと会ったんよ。他の人はもぉ家が潰れたや飯が無いや、泣くし文句言うしやったんやけど、そのおばあさんだけは一言も文句言わんと逆にその環境をええ様に捉えとってん。「あーこれで新しいお茶碗買える」言うくらいに。全壊した事によって皆一からリセットやちゅう晴れた気分でおったんよ。そのおばあさん見た時に僕も頑張ろて、ハッと気付かされたの。実は僕今ガンなんやけどね。かなんことに女房も大腸ガンや。せやけど、僕は下向かへんよ。暗い顔しててもしゃーないやん。明るい顔してたら兄ちゃんとも出会えたやろ。あぁ、ちょっと長い間喋り過ぎたわ。さてと、今日の晩はベーコンスープでも作ろかな。