どうしてもっと、優しい言葉をかけてやらなかったのか

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私は母親が亡くなってからずっと後悔してることがあるの。それはね、どうしてもっと「優しい言葉」をかけてやらなかったのかって事。 今でもはっきり覚えてるんだけど、 私がまだ若かった時のある日に、 映画を観に行ったのね。 でね、その映画を観終わって終電で駅まで戻ったのよ。電車に乗ってる間は「あぁいい映画観たなぁ〜」とか「あの女優さん綺麗やったなぁ」ってすごい余韻に浸ってたの。 でも改札を出たらお母さんが立ってたのよね。 私のことをずっと待ってたの。 それを見た途端にさっきまでの楽しい気持ちに浸ってたのが、 急に現実に帰らされた気がして、 「来んでいいのに!1人でも帰れるわ!大丈夫や!」って強く言って、 1人でプンプンして歩いて帰ったの。 あれは…本当に母親に対してかわいそうなことをしてしまった…。 でも若い時ってきっと気づかないもんなのよね。自分の娘だってそうだったし。 若い間は親の親切がうっとうしかったり、 「分かってるわ!」って言いたくもなるの。 でもいざ自分が80にもなって年老いてくると、あぁどうして母親に優しい言葉をかけてやらなかったんだろうって。 「ちょっと腰が痛い」って言ってる時に 「ふーん」でほったらかしにするんじゃなくて、腰ぐらいさすってあげても良かったのに。 キャンディーの1つや手紙の1枚も、 どうしてもっとあげなかったのか。 きっと喜んでくれたやろうにって思うの。

母親が亡くなった時は涙が溢れて止まらなかったなぁ。亡くなる直前は目も開かないし、会話もできない、寝たきりの状態やったのね。でもね、本当に最後の最後、呼吸が止まりかけ始めた時にね、娘も私らも泣きながら必死になって「おばぁちゃん!おばぁちゃん!」って一緒になって声をかけたの。そしたら微かな声で「はいよ」って母親が言ったのね。それまで本当に一切喋ることもできなかったのに、最後の力を振り絞って返事してくれたのよ。その時に「あっ、私らの声はずっと届いてたんやな」って驚き良かったって思う気持ちと、これは私の解釈やけど「今までありがとう」って言ってくれたんやなと思ってね。親も主人も犬も亡くなってもう私は1人や。ずっと家族が亡くなるとこを見てきて、私は家でコロッと死ねたらなって思うわ。でもちょっとは「おばぁちゃん!しっかりして!頑張って!」とか言われたりもしたいし、娘や孫に「幸せな人生送るんやで」って言っておきたいなぁ。ちょっと喋り過ぎたでな。もっと明るい話したら良かったねぇ。さっ、もう8時やし帰ってパンでも食べよっと。

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