ね、僕はその人たちの分、生きなきゃいけないな、いや生きたいなっていうか。うん、ありますよね、やっぱり。

　ちょっと話脱線しちゃうんですけど、自分の父が法律の事務所を経営してまして。社会保険労務士っていう職なんですけど。その父親が唯一できないのが、英語でして。で父親からは「英語の対応をお前にやってほしい」みたいな話を昔から受けてたんですね。で自分も父親の事務所を継ぎたいなって18で決めていたので、大学の学部だったりとかも、全部決めてたんですね。

　で父親の計画では自分が大学の４年あたりで（留学に）行って欲しかったらしいんです。でも自分は今すぐに行きたいみたいな感じで、そこで意見が合わなくて。ってなったときに、プレゼンまでしたんです、父に。パワーポイントだなんだで作成して。行きたい理由だったり、なんなりを説明させていただいて。そうなんです、結構自分の家が厳格で、父親には基本敬語なんです。で父親が折れて、留学行かせていただいて。

　で、こっからあれなんですけど、自分が留学行ってて、父親が死んじゃったんですよ。帰る2ヶ月前ですかね。癌で死んじゃって。突発性です。でまぁ考えさせられたんですよね。なんかその、仕事のことも、継ぐべきなのか、それとも自分のやりたいことやったほうがいいのかってのですごい葛藤があって。姉が2人いるんですけど、もう男は僕しかいないっていう状況で、末っ子で、ガキで、大学生だし、留学途中だし、法律も触りだけで、専門的な知識も全くない。これで父親が築いてきたお客さんの数を自分にそのままスライドさせても、絶対できないなっていうのがあったんですよ。ってなったときに、父親の期待にも応えたいけど、違った形で応えたいってのを思い始めて、それで母親とも話して今、バーバーの職業に就こうとしてるって感じです。

　なんだろ、寂しいのはもう大前提にあるんですよね。もう今も寂しいですし。留学頑張ってくるねって言って、最後にハグしたのが最後なんですよ。留学中はもちろん会ってないですから。そう考えるとやっぱり、いろんなこと話したかったなってのはありましたし、やっぱりお酒でも飲みたかったなみたいな。ま後悔ではないですけど、願いっていうか。

　　でもなんだろ、不謹慎かもしれないですけど、割といるんですよ、自分の周りには。例えば両親が離婚して、母親一人で育ててくれた、父親一人で育ててくれた、とか。あとは養子だったり、親が幼い時に死んじゃったとか。だからみんな、寄り添ってくれたというか。

　確かに、例えば身内が死んだら自分中心になっちゃうじゃないですか。もちろん、間違いでもなんでもなく、悲しいのは悲しいし。でも同じ境遇にいる人だっているから、別に本当にネガティブになる必要はあんまないのかなと思えて。やっぱり生きてるからこそ、思い出せるじゃないですか、その人のことを。うん、なんで、いい思い出も悪い思い出も含めて、もう過去って考えではなくて、死んだ人たちとは記憶として一緒に生きてるって考えて、生きてる自分がいるからこそ、その人の記憶を思い出すこともできるので。ね、僕はその人たちの分、生きなきゃいけないな、いや生きたいなっていうか。うん、ありますよね、やっぱり。　

　だから、そういう限られた時間をよく考えて生きてたいなって。そうじゃないと、薄い人間になっちゃいますし。だから、例えば両親と仲が悪いとか、家族と仲が悪いとかよく耳にしますけど、そんなガキみたいなことしないでいいじゃんって思いますね。自分はその時間すらも、もう持てないので。