たぶん俺、自分の安心する場所を作れたんだなって思ったんだよ。実家とか家族から離れたところで。これでよかったんだって思えたんだよ。

　なんか変な話、亡くなったことで、発生したお金じゃん、保険金だから。だから母ちゃんが死ななければこの金は発生してなくて、亡くなったことでこのお金ってのが兄弟に分配されて。で兄貴はそれの俺のを勝手に使ってたってわけだから。なんなら、俺の金じゃないんだよこれは。だから、その金でそれするのかってのがすごい、残念だったというか。だから、余計に家族ってなんだろって考える、本当に。ここ何年も考えてるよ。何なの？　家族って何？　みたいな。

　しかも兄ちゃん結婚してるんだよ、子供もいて。だから（兄ちゃんの）奥さんに姉ちゃんと一緒に相談した、そういうことがあったって。で一応話し合いもして、結局その、絶縁するんじゃなくてなんかもう、もう、さ、こういうことを、今度から隠すなと、隠し事をするなと。でもね、やっぱり反省はしてるけど、変わらないんだよね。そのー、あんまり話さないんだよ、だから何を思ってるとか、何をしてるのかも言ってくれない。

　で去年、母方のばあちゃん、俺の母ちゃんの母ちゃんが亡くなったんだよね、六月に。でばあちゃん亡くなったってことで葬式でさ、やっぱ会うわけじゃん兄ちゃんとも。ね、当たり前だけど、こういうときに会うんだよ。で集まって、結局そのときは兄ちゃんと話したりしなかったんだよ、てかたぶんできなかった向こうとしては。気まずいし。

　けど俺もね、それまでは腹が立って感情がぐるぐるしてたんだけど、会ってみたら会ってみたで意外と普通でいれたんだよね。さっき言ったみたいにフラットというか、無関心というか、それに近い。ちょっと一回なだらかになってて。

　でもそれって、なんていうか、今自分の暮らしがあるから、そこが整ったんだなと思ったんだよ。たぶん、安心するものを自分で作れたというか、そういう実感を得られたって言うのか。

　そのー、なんていうか前まではさ、自分の中ですごくテーマだったのが、やっぱり自分の母親を見てたから、（俺は）定年まで生きれないだろなってのはあって。だから今やりたいことやろうって旅したりしてたんだけど。ま ただの現実逃避ね。だから高三の時からずーっとそういうのを考えてたというか、いつまで生きれるのかなってのは頭にあって。でもその後はその後でさ、さっき言ったお金の問題というか、残っている家族の中で、何かのバランスが崩れて。

　結局その、やっぱり母ちゃんがいて、成り立ってる部分があるから、その母ちゃんがいないことでバランスが崩れて、家族の中の変な奴ってのがさらに浮き彫りになるというか。うん。だから兄ちゃんも親父ももともと変わった奴だけど、母ちゃんがいたことでそれがカバーされてた。で居なくなったら居なくなったで、不器用だからすごい、変わり者な上で不器用だから、なんかもう、こっちとしてもコミュニケーションがうまく取れないんだよ。だから、家族って言っても、距離感が難しいんだよね。

　それこそ今年で（母ちゃんが亡くなって）ちょうど十年で。この十年って色々あったけど、でも今思うと悪くないなって思うんだよ。うん。なんかその、結局こういう風に選択をして、こういう状況がなかったら、今ここにいなかっただろうなって思うし。だから今の状況を肯定できるというか、どれもそれが間違いとは思わなかったし、母ちゃんのことで生き方にもかなり影響を受けたし。だから色々あったけど、よかったんじゃないかなって思う。てか、思えない状態だったら、すごい誰かのせいというか、変な話、別に母ちゃん悪くないのに母ちゃんのせいで俺は今こういう状態なんだって言ってたと思う。でも今それがないんだよね、距離置けたからなのか、時間が解決したのか。

　それこそ ばあちゃんが亡くなった一件で、実家にも一年ぶりに帰って親父と話す機会があったんだよ。で俺は実家に帰ることに緊張するんだよ、さっき言ったようなことがあるから。おかしいじゃん普通、緊張する実家って。でもいざ帰ってみたら、嫌だったときのことは思い出すけど、あ実家も嫌じゃないって思えたんだよ。親父とも色々話して。で終えていざ自分のアパートに戻ったら、めちゃめちゃ安心したんだよね、これが。なんか帰ってきたって感覚があって。だからなんかもうそういう場所をたぶん俺、自分の安心する場所を作れたんだなって思ったんだよ。実家とか家族から離れたところで。これでよかったんだって思えたんだよ。

　うん、家族ってなんだろねー。俺 結婚するのかって聞かれたら分かんないなー。家族ほしいかつったら、うーん、って感じだよ本当に。

　他人同士の方が親しいってかさ、家族の方がよく分からんっていう、ね。